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映画『夜に生きる』映像の美しさは光るが、少し残念な作品 - 作品の感想

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©2017 Warner Bros. Japan LLC
All rights reserved.

 『ゴーン・ガール』、『アルゴ』などで有名なベン・アフレックが監督・主演を務めたギャング映画。ならず者として生きる自分を肯定しながらも、完全な悪党にはなりきれない男の葛藤を描いた作品。一次大戦後のヨーロッパを舞台に、一介のチンピラから大規模な非合法ビジネスを取り仕切るまでに成り上がっていく男をベン・アフレックが演じています。

 

 俳優陣は非常に魅力的でしたが、肝心のストーリーや描写がいまいち深みに欠ける作品、といった印象です。人物の掘り下げもあまりなされていないため、登場人物たちのバックグラウンドや行動原理が少々理解しがたい点が残念でした。物語のキーとなる人物が尺に対して多いため、個人的には彼・彼女らの生き死にさほど興味がわきませんでした。もう少し登場人物を減らして、各人物に役割を集中させたほうが良かったのではないか、と思わずにいられません。

 映像の美しさと街の雰囲気の描写は特筆すべきものがあったため、脚本がしっかりしていれば素晴らしい作品になったかもしれない、勿体ない作品だったのかな、という感想です。

 レトロなギャング作品には名作が多いですが、そこに肩を並べるには至らないかったかと思います。正直メインとなるテーマもどこにあるのか分かりませんでした。

 作品内では「自由」や「支配への抵抗」といったワードが時折挿入されていましたが、警視正の息子として甘やかされてきた人間の戯言としか感じられない(終盤、かつての恋人との会話で指摘されている)ことから、思想的な成長を伴わないまま、成り上がってしまった男の悲哀を表現しているのかもしれません。最後に起きる悲劇の際にも、主人公はただただそれを嘆くばかりで、何故そのような事件が起こってしまったのか、という点に関する彼の葛藤は見られません。血で血を洗う激しい抗争と思惑の渦中にありながらも、そこから何かを学ぶことなく、まるで他人事のように語り継ぐ未熟な男の物語なのではないかと思いました。

『メッセージ』ひと味違う地球外生命体とのファーストコンタクト - ネタバレ感想


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 寡作のSF作家テッド・チャンによる『あなたの人生の物語』を原作とした作品。突如地球に現れた、奇妙な姿をした地球外生命体ヘプタポッド。彼らが一体何を地球人に伝えようとしているのか、言語学者である主人公ルイーズが解き明かしていくというストーリーになっています。

 

 お互いの共通言語が全く無い状態から、ヘプタポッドとのコミュニケーションは始まります。同じ形をした地球人同士であれば、お互いの身体のパーツが同じなので、言葉が通じない場合でも、対話のとっかかりを見つけ出すことはできるかもしれません。しかし、本作の場合では、異星人の身体は地球人のものとは全く異なります。こちらの言葉に対して彼らが何を感じているのか、どこまで理解できているのかは、彼らの言語を理解することなしには分かりません。

 また、彼らの用いる文字は非常に複雑で、一つの文字の中に多くの情報が埋め込まれています。

 研究者たちが検討を重ねた結果、ヘプタポッドは過去と未来の区別なく、異なる時間軸にある現象を同時に見渡す能力を持っていますことが判明します。ヘプタポッドの言語を学ぶことで、主人公にもこの能力が宿ります。ルイーズはヘプタポッドと接触するなかで、自身の見知らぬ少女の幻影に悩まされますが、その子供は彼女の夫となるイアンとの間に生まれた子供でした。

 未来を観る能力を得たルイーズには、イアンと結婚し子供をもうけたとしても、娘が病気でなくなってしまうことも分かっています。辛い未来が待ち受けていることを理解していながらも、彼女はイアンと共に歩んでいくことを決めました。

 

 原作ではサスペンス的要素はほとんどみられず、ヘプタポッドとの交流を通した主人公の心の動きや、意識の変化に焦点が当てられています。中国やロシアなど、国家間の思惑が世界の危機を招くといった政治的要素もほぼ無く、紙幅の多くはヘプタポッドの言語を解明していく過程に割かれています。非常に抽象的な議論が展開されますので、趣味に合わない方は読むのが非常に辛く感じられるかもしれません。

 しかしながら、非常に優しいタッチで綴られる美しい小説なので、本作を観て興味を持たれた方は、ぜひ原作『あなたの人生の物語』も読まれてみることをおすすめいたします。映像で表現されていたヘプタポッドの文字や姿について、また違った見方ができるようになるかと思います。

 本作は原作のもつ独特で優しい雰囲気も失わず、映像作品としてのドラマ性を持たせることにも成功した、素晴らしい作品であると思いました。

 ヘプタポッドはルイーズに対し、「君は武器を持っている」と語りましたが、彼女は時間に囚われない認知を獲得しながらも、時間の尊さを感じる心を失わない、宇宙でも稀有な存在なのかもしれません。

『マンチェスター・バイ・ザ・シー』人生の悲喜こもごも - ネタバレあり感想

 主演・ケイシー・アフレックの抑えた演技と、父を亡くしながらも飄々と生きる甥を演じたルーカス・ヘッジスの演技が印象的な作品でした。

 鑑賞前の予想に反して、作品は優しいユーモアを交えながら、穏やかな空気のもと展開していきます。主人公のジョーは時折やりきれない感情をむき出しにして揉め事を起こしますが、周囲の人間の優しさが、彼がひとり孤独に浸ることを許しません。甥のパトリックは、彼女やらバンドやらとジョーを引っ張り回しますし、古い知人はジョーに救いの手を差し伸べ続けます。パトリックの繰り出すくだらない下ネタや皮肉はクスりとさせるもので、二人のやりとりを眺めているこちらとしては、ジョーの苦しみはこうして癒やされてゆくのだ、パトリックの存在が彼を救ったのだと勘違いさせられてしまいます。

 

 しかし、元妻であるランディと不意に街で出くわしたとき、彼の過去に対する深い後悔が溢れ出します。言葉では容易にその感情を表現することのできない彼は、ただ嗚咽を漏らすことしかできません。この光景を目の当たりにして、見かけばかりの穏やかな日常が、いかに無力であるかを思い知らされます。彼が抱えている傷は少しばかりの優しさで救われるものではないのだ、彼は永遠にこの苦しみと戦わねばならないのだと、思い知らされます。あまりにも些細な不注意から生まれてしまった事故ゆえに、その事件を日常から切り離すのも、彼にとっては非常に困難でしょう。

 エンドロールが流れるまでの間には、ジョーはパトリックと暮らす決断を下すことはできませんでした。自分に子供を育てる資格がないという考えは、それほどまでに強いものだったのでしょう。しかし、彼は以前よりも少しだけ人に歩みよることを肯定できるようになりましたし、二人が再び出会ったことは、お互いの人生に僅かであっても好い影響を与えたには違いありません。

 容易な起承転結によって物語を完結させるのではなく、ジョーと周囲の人間の人生が可笑しさと苦悩にあふれながら、これからも続いていくのだということを表現する終わり方であったと思います。

 

 人の苦しみがいかに見えづらいものであるか、孤独を理解するということがいかに困難であるかを実感させられるとともに、そういった努力の尊さも同時に感じさせる印象深い作品でした。

映画『スプリット』謎のオチ - ネタバレあり感想


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© 2016 UNIVERSAL STUDIOS

 主演二人の演技は楽しめるものの、最後の展開にはいまいち納得がいかないように感じました。

 オチの意味が分からなかった方も多いかと思いますが、最後のブルース・ウィリスと女性の取ってつけたような会話は、本作が映画『アンブレイカブル』(主演、ブルース・ウィリス)と同一時空上の事件を扱っている、ということを示しているよう。

 『アンブレイカブル』未視聴の人には意味が分からないという作りになっていて、予告での「衝撃のラスト」というのが一体どの辺りにあるのか分からないという不親切なつくりになっています。私も「アンブレイカブル」は未視聴ですが、事前知識の無い人間にとってはこの作品のファンタジーとしてのライン(科学的に説明できない要素をどの程度許容するのか)が分からないまま映画が進行するため、作品に対してどの程度の緊迫感を持って臨めばよいのか少々困惑します。

 最後に明確な謎解きが行われると期待したまま結末を迎えると、思わぬ肩透かしを食らいます。

 三人の女の子のうち二人が大した意味もなく脱がされるところで、この作品がB級ホラーであることを看破しなければならないというのが本作に仕掛けられたトリックなのでした。

 

『モアナと伝説の海』美しい映像と猛々しいマオリの歌の響き - 感想

©Disney

 何よりも映像が美しい。特に海の描写は、世界で最も美しい海であろうともこの映像を超えることはできないのではないか、というほど。

 キャラクターの動きのコミカルさは、これぞアニメーションにしかなし得ない物だ!と興奮させるものだった。単純に動きの滑らかさを追求するだけではなく、アニメーション特有の「止め」や物理法則の一部をあべこべにしたような動きが非常に愉快。この辺の表現力は日本のアニメのお家芸だと思っていたのだが、3DCGアニメーションが単なる写実の世界と仮想に過ぎないバーチャルを優に超えて、新たな世界を構築しつつあると確信させるものだった。

 主人公モアナの人物描写も魅力的であったと思う。集落という硬直的な既成の枠からの脱却、反抗を経て、新たな自分を見つけ出すというプロット。単純ながらも力強く、ひとりの子どもが困難を乗り越えることで立派な人間としてたくましく成長していく姿は、非常に明快で爽快なものだった。

 また、マオリの歌の発音が個人的に非常に好みだった。モアナが洞窟で垣間見た、祖先の人々が果敢に船を漕ぎ、新天地へと向かう映像から感じる猛々しさったらない。

 

 この作品に対しては、公開時にはマオリの末裔の方からステレオタイプを助長しかねないという批判も一部あったようだが、作品を観終えて、マオリに対する憧憬を抱きこそすれども、ネガティブな印象を抱く人は非常に少ないのではないかと思う。そういった上から目線の論評こそが不愉快だ、と言われてしまえばそれまでなのだが、あらゆる価値観は外部からの目に晒されざるを得ないというのもまた事実であると思う。

 

 エンドロール後にはファンサービス的な映像が少しだけ流れる。ストーリーに直接関わるものではないが、この作品を完璧に楽しみたいという方は、ぜひ席を立たずに余韻に耽っていると、ご褒美が貰えることだろう。

府中駅付近で勉強・作業に使えるお店・施設に関する個人的メモ

府中中央図書館

 22:00まで開館。学習専用のスペースはあるが、府中市民以外は利用不可。その他の読書スペースは誰でも利用可能。混雑度は高めだが、座れないというほどではない。蔵書数も多く、自動貸出機の使い勝手が良い。近隣市民は相互利用可能。しかし臭いがキツイのが難点。どうにかしてくれ。

 
生涯学習センター

 22:00まで開館。学習スペースあり、ソファーなどの休憩スペースあり。規模の割に利用者数が少なく、特に夕方以降は閑散としている。小音量のクラシックが心地よい上、Wi-Fi利用可能。寂れ具合がむしろナイス。人に囲まれず、静かに勉強や作業を行いたい場合にちょうどよい。ただし立地が悪い。あと埃っぽい気がする。

 

マクドナルド 

 24時間営業。マクドナルドの店舗にしては空いているほうか。コンセント席も複数あり。バッテリーが必要なとき、22時以降、深夜に作業を行いたいときに利用。若干の糖分を必要とする際にも。当然ながらやかましいが、運次第。音楽のボリュームを下げろ。

 

スターバックス

 カフェインが必要なときに。高くはないが金がかかる。コーヒーの味は大したことないので、ミルクでごまかす。長時間の利用に引け目を感じる場合は100円で再度コーヒーチャージ。やはりマズイ。22:30閉店。あと1時間30分粘ってほしい。割増料金払ってもいいぞ。

 

TOHOシネマズ

 なんかもう面倒くさくなったときに行く。勉強なんてしてられっか、という気分のときに。劇場としてのクオリティのわりに混んでいる。

 

 

 競馬場や刑務所、米軍基地跡やら、ネガティブな印象を与える施設も多いが、その反動からか、文化施設の数や設備は充実している印象を受ける。そこんところのアンバランスさを受け入れられる人にとっては過ごしやすい土地かもしれない。

映画『レゴバットマン』ヒーロー物嫌いに勧めたい作品

 のっけからハリウッド映画の壮大な演出を茶化しにいくという導入に始まる。ここで笑えるかどうかが本作を楽しめる人かどうかの試金石になっている。終始オマージュやメタネタが満載で、シュールな笑いが本作の大きな魅力となっている。

 バットマンシリーズについて多少の知識がないと笑いどころの多くを逃してしまうので、本作を十分に楽しむことはできないと思われる。しかしながら、重要なのはバットマンシリーズを「観たことがある」かどうかであって、必ずしもシリーズのファンであることは要求されない。むしろ『ダークナイト』を観て「いい年したおっさんがコスプレして何やってんのよ…」とか「ヒーロの苦悩とか何マジになってんの?」という感想を抱いた方は、本作でたびたび用いられる過去シリーズに対するメタネタは大いに笑えると思う。レゴアニメという性質もあって、ヒーロー物の妙なシリアス感が受け付けないという方も抵抗感なく観ることができる作品になっている。