プロスポーツにおける不正対策の意義―プロ将棋界の不正対策に関して

日本将棋連盟が将棋ソフトを利用した不正対策のためのルール追加を発表した。

mainichi.jp

 もちろん、この施策の直接的な意味は、ソフトのカンニングや他の手段による不正によって、本来の実力と関係ない部分で勝敗が左右されてしまうのを防ぐことにある。

 しかし、この施策に関して、プロ将棋の今後を考える上でより重要な点は、不正の可能性を潰すことで、ファンに対し棋士同士の真剣勝負をアピールすることにあると思う。

 以前当ブログにおいて、コンピュータ将棋ソフトが将棋界に与えた影響について書いた。

pinplot.hatenadiary.com

 無論、プロ同士が覇を競い合う環境にこそドラマが生まれ得るのであるから、プロ棋士の強さには今後も価値があり続けることはいうまでもない。しかし、将棋界の外へ目を向け、他のスポーツとの競合を考えたとき、プロ将棋は純粋な強さを持っているのみでは不十分なのである。

 プロ同士の対局が今後もスポーツとして価値を持ち続けるためには、対局のなかにドラマ性が存在することが不可欠である。将棋ソフトを利用した不正が可能な状況は、ファンがドラマに入りこむのを阻害する要因となりうる。

 すなわち、棋士が実際に不正をおこなうかどうかではなく、不正が可能な状況そのものが問題となるのである。チェスの国際大会において、高い実力をもつプレイヤーがソフトを利用した不正を行っていることからも、プロが不正を行う誘因をもつことは否定できないであろう。ゆえに、プロ将棋界にも同様の疑いがかけられる可能性は排除できない。 

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 厳しい制限や違反者への処罰を設けると明確に宣言することは、ファンや世間からの不要な疑いを避けるうえで、大いに機能すると思われる。

 したがって、本件について、棋士への信頼といったものをベースに議論を行うことは誤っていると私は考える。何よりも棋士の価値を貶めないためにこそ、この施策には存在意義があると思う。

 

将棋界の不思議な仕組み プロ棋士という仕事

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