『シティ・オブ・ゴッド』スラムにおける道徳と観察者の視点 - 作品の感想

 

 スラム街に生きる少年ギャングの生活をリアリティあふれる描写で描いた傑作です。スラムの現実の生々しさを残しながらも、エンタメとして成立させた構成力が非常に素晴らしく感じました。

 こういった境遇にある人々を描く方法には、

 1.忠実に現実を描写する

 2.捨象してドラマチックにまとめる

といった方法が考えられると思います。

 1の方法はいわゆるドキュメンタリーやレポートのような形になります。興味深くはありますが、最初から関心を持っている人でないと興味をもって観てもらえない可能性もあります。2の方法はエンタメ作品として構成する上で完成度を上げやすくなりますが、過剰なドラマ性を要求されるために、映像が実態とはかけ離れたものになってしまいがちです。

 他の作品においては、過酷な環境を生きる彼(彼女)らの生活は美しいとでも言うような描写がされているものもありますが、そんなものは仕事も社会保障もある先進国で生活してる人間の歪んだ美化に過ぎないと思います。安全な日本で生まれ育った人間としては、彼(彼女)らの生き方はただただ危ういとしか感じられません。たくましさを感じこそすれ、それがよいものであるなどとは思うことができません。

 この作品はそのような綺麗な鑑賞態度を強いるものではありません。過剰なメッセージの押し付けもありませんし、彼らの生き様をどう評価するかは鑑賞者に委ねられています。

 では退屈なドキュメンタリーなのかといえば、そんなことは全くありません。軽快なテンポとどこか冷めたような主人公の語りが奇妙な面白さを生み出し、鑑賞者を飽きさせないつくりになっています。主人公が構えるカメラのレンズ越しに現実を覗くように、あたかも鑑賞者もその場で現実を体感しているかのような感覚に誘ってくれます。