『ブラック・ミラー』シーズン2第2話「シロクマ」群衆が人の罪を裁くとき - ネタバレと感想

SFオムニバスドラマ『ブラック・ミラー』シーズン2第2話「シロクマ」のネタバレと感想になります。

あらすじ

 主人公の女性ヴィクトリアは、見知らぬ住宅の一室で目を覚ます。手首には傷があり、自分が何者であるかも思い出せずただ困惑する。記憶の手がかりとなるのは、娘と思しき写真とフラッシュバックする夫らしき男性の姿のみ。外へ出て助けを求めるが、周囲の人間はニヤつきながら彼女をスマホで撮影するばかりで、彼女の呼びかけに答えようとしない。

 途方に暮れていたところ、ヴィクトリアは突如謎の覆面をした男に命を狙われるが、迷彩服を着た女性に助けられる。その女性の説明によると、あるときから人々の脳に点滅する画像のような「シグナル」が送信されるようになったという。それによって多くの人はおかしくなり、目の前で起きる出来事をただ眺めたり撮影したりするばかりとなってしまった。

 一部の人間は「シグナル」の影響を受けにくいらしく、ヴィクトリアと彼女を助けた女性もその一人である。しかし、そのなかには人間を狩る「ハンター」と化した無法者がおり、先ほどヴィクトリアを襲った男もハンターだという。

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ヴィクトリアを狙うハンターとその様子をスマホで撮影する人々。

『ブラック・ミラー』シーズン2第2話「シロクマ」より

    この世界には人々にシグナルを電波で送信する送信所が存在するらしく、「ホワイトベア(シロクマ)」と呼ばれる地区にも送信所が存在する。女性はその送信所を破壊して人々を元に戻すことを目標としており、ヴィクトリアも彼女に帯同してホワイトベアに向かうこととなる。ヴィクトリアの視界には時折、娘と夫と思しき人の姿がフラッシュバックするが、二人が何者であるかは思い出すことができない。

 シロクマに到着した二人は送信施設内に忍び込み、施設を破壊するために火を放とうとする。そこで施設内に潜んでいた武装したハンターに襲われ苦境に陥るが、ヴィクトリアがハンターからショットガンを奪い取ることに成功する。男に向けショットガンを発射するも、銃口から出てきたのは紙吹雪。何が起きたのか理解できず困惑するヴィクトリアをよそに、彼女の背後にあった扉が開かれる。そこには歓声をあげる大勢の観客がいた。

 

 なんと、これまでの一連のストーリーはヴィクトリア以外はサクラのリアリティショーであったことが判明する。ショーの司会者の説明によると、ヴィクトリアとその元夫は過去に少女を誘拐し暴行を働いており、その残虐性から国中に知れ渡った犯罪者であった。彼女の視界にフラッシュバックしていた少女と男性はヴィクトリアが誘拐した子供と、一緒に犯罪を犯した夫であった。

 事件発覚後ふたりは世間から大バッシングを受けたが、獄中で夫が裁きを受ける前に自殺したために、ヴィクトリアが代わって記憶を消去されてショーに参加することで罪を贖うこととなった。告げられた事実に呆然とするヴィクトリアに対し、大勢の観客が彼女を撮影しながら「人殺し」といった罵声を浴びせる。「シグナル」によっておかしくなったと思われた人々がヴィクトリアを撮影する様は、ヴィクトリアとその夫が少女に暴行を働きながら動画を撮影して楽しんでいたことに対する皮肉であった。

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ヴィクトリアに容赦ない罵声を浴びせる観客。

『ブラック・ミラー』シーズン2第2話「シロクマ」より

 ヴィクトリアが体験したものはホワイトベア・ジャスティス・パークと呼ばれる施設で行われる体験型のショーであり、シグナルによっておかしくなったと思われていた人々は、ショーの観客兼エキストラであった。被害者と同様の苦しみを味わった後に彼女は再び記憶を消去され、延々と同じショーが繰り返される。施設には連日大勢の客が押し寄せ、ショーは人気を博していた。

 

感想

    序盤なんだか雑な世界設定だなと思っていたら、それもリアリティショーであることを表現する演出の一部だったというオチでした。本作では、悪人に与えられる裁きがエンターテイメントと化してしまった様を描いています。SNSの発達後は特に顕著ですが、近年は「悪」に対する裁きに民衆が関与する傾向が強まっています。

 犯罪者ではありませんが、最近の例ですと長谷川豊氏のブログ上の発言に対する強烈なバッシングが挙げられるでしょうか。ここで述べたいのは彼の発言の是非に関するものではなく、「悪」とみなされたものへのバッシングを、ある種の娯楽のようにとらえている人種が存在するということです。

 また、作中でヴィクトリアが犯罪行為を撮影していたように、現代では悪事そのものもエンタメとして成立しうるシステムが出来上がってしまっているともいえるでしょう。犯罪行為というものは基本的に犯罪者の私的な体験であったわけですが、現在では動画撮影などを通してソーシャルメディア上で拡散することも可能になりました。そのようなコンテンツを消費して楽しむユーザーも一部には存在します。

www.nikkei.com

 無論、このメディアの拡散力は正しく使えば民衆にとって大きな武器になりえます。しかし、悪意は善意よりも容易に広がりますし、コンテンツの鑑賞者も、傍観者である限りは犯罪者の発信するコンテンツを消費しても責任を問われることはほとんどありません。現代は見えない加害者として悪意のない一般人が加わる恐れが極めて高い社会であるといえるのではないでしょうか。本作はそのような社会に対する警句を発するもののように思います。

 

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シリーズ全体のまとめ

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