『ブルーに生まれついて』優しいジャズの音色が彩る、一人の奏者の盛衰 - 作品の感想


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 ©2015 BTB Blue Productions Ltd and BTBB Productions SPV Limited.

11月26日より日本公開となりました、映画『ブルーに生まれついて』のあらすじ、感想となります。

    本作は、ジャズトランペット奏者チェット・ベイカーの挫折と再起を描いた作品です。美しいジャズの音色が一人の人間の人生を優しく彩っています。

 

あらすじ

    薬物依存に苦しんでいたチェットですが、ドラッグの売人から受けた暴行により、歯の多くを失い、顎に後遺症を負ってしまいます。彼は楽器を満足に演奏することもできなくなり、苦しいリハビリ生活を強いられることとなります。恋人のジェーンの支えとともに、薬物の誘惑に抗いながら、チェットは再び奏者としての再起を図る。

 

以下ネタバレありの感想になります。

なお、実際のチェット・ベイカーの生涯との差異や脚色については触れず、あくまで映画の内容のみに基づいた感想となります。

 

感想 

    本作を語る上で欠かせないのが、薬物中毒に悩まされるチェットを献身的に支えるジェーンの存在です。後遺症によって屈辱的なリハビリ生活を強いられることとなったチェットですが、彼女はチェットが再び成功を収めるまで彼を励まし、気長に待ち続けます。彼女自身も女優としての成功を夢見る人間ですが、チェットを見守る優しげな瞳は、恋人でありながらも母親のように感じられました。

    ラストのシーンで、彼は大きな決断を迫られることとなります。再起をはかるための大きな舞台を目前にして、中毒症状を抑えるための薬が切れてしまい、再び違法薬物を摂取する誘惑に駆られます。

    薬物を摂取すれば最高の演奏ができると考えるチェットですが、それは同時に、これまで彼を支えてきてくれた人達を裏切ることを意味していました。目前に迫った成功と、周囲の人間との絆の間で苦悩するチェット。

 

     たくさんの大物が見守る舞台で素晴らしい演奏をしてみせたチェットですが、彼は結局、ジェーンや友人との誓いを守ることができませんでした。成功を目前にして、自分の演奏を信じ切ることのできなかった弱さによって、薬物に頼り、大切な人を失ってしまいました。

    変わることの難しさと、失われた信頼の重さが身にしみる結末でした。映画は素晴らしい演奏を最後に幕を閉じますが、彼の人生はその後も続いたのだということを考えると、エンドロールでは何とも言えない寂しさが残りました。