『モアナと伝説の海』美しい映像と猛々しいマオリの歌の響き - 感想

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 何よりも映像が美しい。特に海の描写は、世界で最も美しい海であろうともこの映像を超えることはできないのではないか、というほど。

 キャラクターの動きのコミカルさは、これぞアニメーションにしかなし得ない物だ!と興奮させるものだった。単純に動きの滑らかさを追求するだけではなく、アニメーション特有の「止め」や物理法則の一部をあべこべにしたような動きが非常に愉快。この辺の表現力は日本のアニメのお家芸だと思っていたのだが、3DCGアニメーションが単なる写実の世界と仮想に過ぎないバーチャルを優に超えて、新たな世界を構築しつつあると確信させるものだった。

 主人公モアナの人物描写も魅力的であったと思う。集落という硬直的な既成の枠からの脱却、反抗を経て、新たな自分を見つけ出すというプロット。単純ながらも力強く、ひとりの子どもが困難を乗り越えることで立派な人間としてたくましく成長していく姿は、非常に明快で爽快なものだった。

 また、マオリの歌の発音が個人的に非常に好みだった。モアナが洞窟で垣間見た、祖先の人々が果敢に船を漕ぎ、新天地へと向かう映像から感じる猛々しさったらない。

 

 この作品に対しては、公開時にはマオリの末裔の方からステレオタイプを助長しかねないという批判も一部あったようだが、作品を観終えて、マオリに対する憧憬を抱きこそすれども、ネガティブな印象を抱く人は非常に少ないのではないかと思う。そういった上から目線の論評こそが不愉快だ、と言われてしまえばそれまでなのだが、あらゆる価値観は外部からの目に晒されざるを得ないというのもまた事実であると思う。

 

 エンドロール後にはファンサービス的な映像が少しだけ流れる。ストーリーに直接関わるものではないが、この作品を完璧に楽しみたいという方は、ぜひ席を立たずに余韻に耽っていると、ご褒美が貰えることだろう。