映画『夜に生きる』映像の美しさは光るが、少し残念な作品 - 作品の感想

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 『ゴーン・ガール』、『アルゴ』などで有名なベン・アフレックが監督・主演を務めたギャング映画。ならず者として生きる自分を肯定しながらも、完全な悪党にはなりきれない男の葛藤を描いた作品。一次大戦後のヨーロッパを舞台に、一介のチンピラから大規模な非合法ビジネスを取り仕切るまでに成り上がっていく男をベン・アフレックが演じています。

 

 俳優陣は非常に魅力的でしたが、肝心のストーリーや描写がいまいち深みに欠ける作品、といった印象です。人物の掘り下げもあまりなされていないため、登場人物たちのバックグラウンドや行動原理が少々理解しがたい点が残念でした。物語のキーとなる人物が尺に対して多いため、個人的には彼・彼女らの生き死にさほど興味がわきませんでした。もう少し登場人物を減らして、各人物に役割を集中させたほうが良かったのではないか、と思わずにいられません。

 映像の美しさと街の雰囲気の描写は特筆すべきものがあったため、脚本がしっかりしていれば素晴らしい作品になったかもしれない、勿体ない作品だったのかな、という感想です。

 レトロなギャング作品には名作が多いですが、そこに肩を並べるには至らないかったかと思います。正直メインとなるテーマもどこにあるのか分かりませんでした。

 作品内では「自由」や「支配への抵抗」といったワードが時折挿入されていましたが、警視正の息子として甘やかされてきた人間の戯言としか感じられない(終盤、かつての恋人との会話で指摘されている)ことから、思想的な成長を伴わないまま、成り上がってしまった男の悲哀を表現しているのかもしれません。最後に起きる悲劇の際にも、主人公はただただそれを嘆くばかりで、何故そのような事件が起こってしまったのか、という点に関する彼の葛藤は見られません。血で血を洗う激しい抗争と思惑の渦中にありながらも、そこから何かを学ぶことなく、まるで他人事のように語り継ぐ未熟な男の物語なのではないかと思いました。