『TAP the last show』陳腐なドラマも吹っ飛ばすタップダンスの迫力 - 感想(ネタバレなし)

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 『相棒』シリーズの水谷豊が初監督兼主演を務める作品。かつてタップダンサーとして名を馳せたが、ショー中の事故により引退を余儀なくされた男の再生と、彼の周囲の人間模様を描く。

 

 簡単に全体の感想を述べると、タップダンスシーンと作品の色遣いは素晴らしいのですが、セリフやドラマ部分の陳腐さが目立つ作品でした。

 ストーリーの骨幹は、経営難で破綻寸前のショー座が最後の花道として、かつての名優であるワタリ演出による最高のショーを作っていく、というものです。演者として国内の気鋭の若手ダンサーを集め、彼らをマネジメントしていく苦労が描かれるわけですが、彼らの人生ドラマがいかにも記号的で、日本ドラマだなあとしか感じられませんでした。

 陳腐な恋愛ドラマや父親とのわかり易い確執といった、いかにも使い古されたり表現が多用されているシーンが薄ら寒く感じられます。

 また、クライマックス直前に作品内の映像を用いた長尺の回想シーンが挿入されるのですが、はっきりいって要りません。うんざりするような青春ドラマをもう一度みせられるのか…と席を立ちたい気分になりました。

 

 

 以上のような感じで、ドラマ部分については、はっきりいって退屈としか言いようがないのですが、それすら覆すレベルでタップシーンから得られる感動が凄まじいものでした。本物のタップダンサーによる長尺のダンス公演は非常に迫力があり、生でダンスを観ているかのような感動がありました。個人的には、太田彩乃演じるダンサーの美しさと強さが非常に魅力的に感じられました。

 

 オーディションにおけるワタリのスパルタぶりは映画『セッション』の講師のしごきを彷彿とさせるものがありましたが、作品が終盤に進むに連れていつのまにか柔和な性格になっていた点に困惑しました(笑)。

  おっさん連中のセリフが少々臭い感じなのは、バブル後の悲哀を表現するのに一役買っているようで、むしろ好感が持てました。

 総じて、ストーリー部分は古いテンプレをそのまま流用した形で面白みはないのですが、迫力のタップダンスだけで観る価値があると思わせる作品でした。『相棒』の水谷豊しかご覧になったことのない方は、眼鏡を外し髭をたくわえた渋カッコイイ水谷豊の姿に驚かれるかもしれません。